臨床試験の限界
こんにちは!
薬をやめた薬剤師の川上です。
私は、長いこと医薬品の臨床試験の仕事をしていました。
医薬品が世の中に出るためには臨床試験(治験)が必要で、
「医薬品の臨床試験の実施に関する基準(GCP)」という
厳格なルールのもとで実施されていることは、すでにお伝えしました。
臨床試験を実施するには、倫理的にも、科学的にも、
問題ないことが重要です。
そして、データの質の管理をきちんとしなくてはいけません。
そんな厳格な臨床試験では、統計解析で結果を論じます。
例えば、80%の有効率の「A薬」が、70%の有効率の「B薬」に比べ、
統計的に有意に有効率が高い場合には、
「A薬」の有効性が証明されたことになり、
「B薬」が治験の薬の場合には、開発を断念することもあります。
ただ、患者さんによっては、
「A薬」では効果がなく、「B薬」で効果がある場合もあります。
また、ある薬の、ある副作用が0.01%(1万に1人)でも、
自分がこの副作用になることだってあります。
自分や自分の家族にとっては、効果があるのか、ないのか、
副作用がでるのか、でないのか、白か黒か、なんですよね。
それから、例えば、高血圧の新しい薬を開発する場合には、
あたり前かも知れませんが、血圧を下げる効果を臨床試験でみます。
でも、大事なことは、新しい薬を使うことによって、
虚血性心疾患や脳血管障害などの生活に支障がでる病気にならないこと、
死亡を避けることです。
癌の薬の場合には、癌の縮小率を調べますが、
患者さんや、ご家族にとっては、
できるだけ長く生きること(延命)を期待します。
この場合、延命率を「トゥルー・エンドポイント(true endpoint)」と言い、
真の評価項目という意味です。
癌の縮小率は「サロゲート・エンドポイント(surrogate endpoint)」と言い、
代わりの評価項目という意味になります。
臨床試験によっては、かなり多くの患者さんを対象にして、
数年にわたって実施する場合もありますが、
ある程度限られた人数、限られた期間で実施しざるをえません。
臨床試験には限界があります。
臨床試験については、まだまだ伝えたいことはありますが、
とりあえず、臨床試験のお話しは、ここまでにします。
ゴールデンウィークも終わりですね。
新緑の季節。ファスティングを実施するには最適です!
薬をやめた薬剤師
川上 修一